【対談3】植物の真の力は、有機栽培で育てて初めてわかる

白井氏
無農薬、有機にするもう1つ大きな理由というのが、先ほど冒頭に申し上げた『田七人参というのはそもそもなんなのか』ということにも関わってくるんですよ。それはどういうことかというと、田七人参は瘀血(おけつ)を癒すとか、昔から肝臓病だとか泌尿器系だとか、第一製薬で調べたら肺がんにも大腸がんにも効果があるよという結果が出たわけですね。それって誰かがなんらかの方法で栽培しなければ市場に出回ってこないわけです。市場に出回るときにわれわれはどんな田七が一番いいのかと想定しているということなんです。今の想定ははっきり明確に見えていて、それは何かというと、人間の手を加えない田七人参が一番上質だと考えています。『本草綱目』という500年以上前に書かれた薬学書の中にもう既に田七人参は登場しているわけですね、非常に素晴らしいと。

位置付けは生薬という。ここ20年30年とか100年の評価ではないんですね。随分昔から評価されている。素晴らしい漢方薬と言われている。万能薬とも言われている。その万能薬と言われているものの評価が高かった頃の田七人参とは、当然今の田七人参と栽培方法が大きく異なるわけですよね。化学肥料があるわけでもないし、当然、殺虫剤や除草剤なんてあるわけがない。今の田七が市場で非常に評価が低いということを考えれば大量生産をしたことによる弊害が評価になっているだろうと僕は考えているんです。

とするとなれば、昔の田七人参に戻すということは、イコール効果効能を本来の田七人参の効果効能に取り戻すということだと思っているんですね。じゃあどういうことをやるのかというと、当然化学肥料も農薬も殺虫剤も使いませんよと。殺菌剤も使わない。できれば天然の山に種を撒いて、そこに自生するような田七が欲しいということで、4~5年前から取り組みを始めているんです。ですから、無農薬、有機というのはわれわれにとっては通過点であって、それが初めてできるようになると本来の田七人参の効果効能がより上質なものにアプローチできるということなんです。

スタッフ
大量生産の弊害というのは、効果効能を偽るようなものになっているということですか。
白井氏
そういうことですね。
スタッフ
それは何を見て感じられたんですか。
白井氏
間違いなく残留農薬ですね。通常の田七人参からは100%残留農薬が検出されるわけですね。われわれが有機の認証をとったところの中国の畑からも残留が出てくるぐらいなんですよ。完全有機なのに残っている。農用の転換をするために4~5年放置して、それから田七を始めるんですけれども、それでも残留が残ってしまうということなんです。この残留というのは、間違いなく猛毒に近いものなんです。何も知らずにこの残留濃度が高いものを毎日毎日摂取していれば、それは薬なんかにはならないわけです。大量に生産するというのが悪いわけではないです。ただ、いい側面もあって、田七人参の中から主成分を抽出して、何かの医薬品にしようとした場合、われわれのような有機栽培でやっているまどろっこしいことでは抽出できないわけですね。そうなれば農薬を使って有効成分だけを引っ張り出す。これはとても有効なことだと思います。何を目指すかということなんですね。われわれは有効成分抽出ではなくて、田七人参全体を使いたいという。
スタッフ
あくまでもOne of themという発想ですね。
白井氏
はい。例えば、仮想の敵を作っておいて、「それはダメなんだ」、「それと比較して優勢なんだ」ということにはまったく興味がないです。自分が一体どこにいて何をしているのかということを理解していれば十分だと。
スタッフ
実際にどうやって作られているのかということを言葉で表現していただけますか。
白井氏
今、僕が現地の人たちを指導したり有機認証を取るということは、当然農薬も使えない、化学物質も使えない、有機認証で認められているような資材しか使えなくなってきます。これは全部天然成分です。具体的なものは何かというと、例えば手で草をむしるとか、非常にそれはもう近代農業とはかけ離れたことをやるんですけれども。大きく考え方として分けているのは、自宅で生産する野菜は食を満たす農作物ということです。

例えば、トマトは雨をできるだけあてずに糖度の高いものを作ろうとか、レタスは寒冷材をかけたり、防虫剤をかけて虫に食べられないようにしておいしいものを作るとか。このように量が多く、味覚に優れているものが通常の農産物です。ところが田七人参は食を満たすものではなくて、薬効効果をわれわれが受託するものなので、薬効効果を高めるために、いたずらに田七人参を大きくすることを避けようと思っているんです。どうしてかというと、芽を大きくするためには窒素分を大きくしなければいけないんですね。大きくすればじゃあ効果が上がるのかということで有機栽培を展開するのであれば、近代農業とそんなに変わっていないわけです。化学肥料の代わりに、化学肥料の中に含まれている成分の有機物をどんどん入れるわけですから。それを大量に入れて大きくするわけですね。

化学肥料は直接的に効くだけで、有機肥料は間接的に微生物や酵素が分解してそれがミネラルとして吸い上がっていく。結果、同じことだと思うんです。われわれが食べるようなお野菜や根菜類をやるんだったらそれでいいんですが、田七人参は大きくするということが効果効能を引き出すことではないと。逆に大きくしない。ギリギリの有機物で、自分で育つという能力を持っています。これは有機リンゴもそうなんですよ。農薬を使っていたリンゴの木を有機に切り替えると、生かされてきたものが今度は自分で生きなくちゃいけないわけです。それでどうなるかというと突然収穫量をガタンと落ちるわけですね。

秋口になったら葉っぱを落として根を守る。実を落として根を守るということをやり始めるわけです。それで収穫量が落ちる。有機栽培をすると収穫量が落ちるよというのはそういうことなんです。田七もそれは全く同じだと僕は思っています。田七を大事に育てるのではなくて、田七自体に生きてもらう。多分、昔の田七ってそうだったはずなんですよ。間違いなくそうなんです。その昔、自生のやつを山からとってきて飲んでみたら効果がすごいよねというところから始まっているわけですから。

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